「IAP呼吸法」とは
「IAP呼吸法」とはスタンフォードのスポーツ医局が取り組む、最新メソッドで、体内圧力を高めてダメージを完全にブロックすると言われている呼吸法。
その内容が書かれているのが『スタンフォード式 疲れない体』(山田知生著、サンマーク出版)。今回は本書から抜粋して、ヨガ(呼吸法)指導歴10年目のヨガインストラクターAyanoが、IAP呼吸法について書いてみようと思います。
鍵は「横隔膜」と「体内の圧力」
「IAP」とはIntra Abdominal Pressureの略で、日本語に訳すと「腹腔内圧」。人間のおなかのなかには「腹腔」と呼ばれる胃や肝臓などの内臓を収める空間があり、この腹腔内の圧力が「IAP」。
IAPが高い(上昇する)場合は、肺に空気がたくさん入って腹腔の上にある横隔膜が下がり、それに押される形で腹腔が圧縮され、腹腔内の圧力が高まって外向きに力がかかっている状態を指すそうです。
腹式呼吸との違い
IAP呼吸法は、息を吐くときにお腹をへこませる腹式呼吸とは異なります。
腹式呼吸の場合は、息を吐く時にお腹をへこませてIAP(腹圧)を弱めるのですが、腹圧呼吸ではおなかをへこませず、息を吐くときも圧をおなかの外にかけるように意識し、お腹周りを固くしたまま息を吐ききるのが特徴です。
私のヨガ教室ではお腹を凹ませる腹式呼吸も取り入れていますが、スタンフォード式のIAP呼吸法の方が「お腹(体幹)に効く!」というのが実感です。
慣れないうちはかなり意識しないとできないので、「意識を自分の体に向けていること」で、雑念からしばし離れ、脳もスッキリするように感じます。
IAP呼吸法で得られる効果
- 腹圧が高まることで、体の中心(体幹と脊柱)がしっかり安定する
- 体幹と脊柱が安定すると、正しい姿勢になる
- 正しい姿勢になると中枢神経と体の連携がスムーズになる
- 中枢神経と体の連携がスムーズになると、体が「ベストポジション」(体の各パーツが本来あるべきところにきちんとある状態)になる
- 体が「ベストポジション」になると、無理な動きがなくなる
- 無理な動きがなくなると、体のパフォーマンスが上がり、疲れやケガも防げる
- 睡眠前のIAP呼吸法で体を回復させられる
体のバランスは「疲れ」と大いに関係する
腹腔の圧力が高まることで、体幹と脊柱という「体の中心」が支えられて安定し、無理のない姿勢がキープできることで、中枢神経の指令の通りに体の各部が動き、脳神経とうまく連携でき、余分な負荷が減るという理論。
逆にいえば、体が歪んで姿勢が悪くなると、「肩をかばって腰の筋肉を使う」という具合に、少しの動きにも余計な負荷がかかるようになり、エネルギーを無駄に消耗する「疲れやすい体」になってしまうということ。
歪んだ姿勢で呼吸を続けていれば体は疲れやすいままなのです。
呼吸法とは別メニューで体幹トレーニングや姿勢改善ヨガをトレーニングしていた私にとって、IAP呼吸法ひとつで体幹や背柱が安定して姿勢も整い、体が正しく動いて「疲れない体」が手に入る事は、時間短縮になり、時間の有効活用がうまくできるようになった事は嬉しい限りです。
IAP呼吸法をマスターするコツ
一流アスリートや音楽家は自然と腹圧呼吸はできていますが、ストレスの多い一般の人は胸で浅い呼吸をすることが癖になっていて、「お腹で呼吸すること」が難しい状態になっています。
無意識の浅い胸呼吸から、意識的に意図的に横隔膜を動かしてIAP呼吸法を自分のものにしていきましょう。
「横隔膜の可動力」がきわめて重要
胸だけの浅い呼吸をしていると、肺の下にある横隔膜をあまり動かせないため、本来上がったり下がったりする横隔膜の動きが悪くなるそうです。するとおなかに圧力はかかりにくくなり、体は縮こまり、姿勢が悪くなり、中枢神経の信号も体の各部に届きにくくなるため、より疲れやすい体になるわけです。
逆に横隔膜をしっかり下げて息を吸えば、腹腔が上からプレスされ、外側に圧力がかかることに。横隔膜を下げながら息を目一杯吸い、お腹をパンパンに膨らませたまま息を吐くのが、自然に腹圧がかかった「腹圧呼吸」。
横隔膜を下げて腹腔内に圧力が生じた結果、おなかは外側へ膨らみ、体幹まわりの筋肉が360度ぐるりと伸びることになります。これが、おなかが大きく固くなる仕組み。また、「おなかの内側から圧力」がかかると、それを押し返そうとして「おなかの外側からの筋力」も働くことになります。
このダブルの力で、体の中心(体幹と脊柱)がしっかり安定し、姿勢が整うということ。これが、IAPを高めることによる「体の中心・基礎固め」効果。
「IAP呼吸法」を実践してみよう!
取り組む前に
- ・椅子に座って行います(所要時間は1分)
- 筋肉に力を入れずに、できるだけリラックスして行いましょう。
- 決して無理をせず、体調が途中ですぐれなくなったりしたときは中断。
- コンディションが戻ってから再開しましょう。
- 疲労を防止するためにも、「1日最低1回」は取り組みましょう。
そして慣れてきたら、今度は手を使わずに行い、立ってできるようになったら普段の生活でも「IAP呼吸法」を実践し、できるだけ腹圧を高めて呼吸するようにシフトしていけばOK。
IAP呼吸法のやり方
- 耳と肩のラインを真っ直ぐにし座る。お腹と太ももは90度。肩はリラックス!
- 手のひらを上にして、指先を体に向け、指を足の付け根(鼠蹊部)に差し込んでいく。
- 肩を上げずに、5秒かけて鼻から息を吸い、足の付け根に差し込んだ指をお腹で徐々に押し返すようにお腹を膨らませる。(指がお腹にはじかれていれば、お腹全体にきちんと空気を取り込んでいるという証拠)
- 腹圧をキープしたまま5~7秒かけて息を吐きます。次のポイントは肋骨です。息をゆっくりと吐くときに、膨らむのをキープすると肋骨が下がっていく。肋骨が真っ直ぐに下りていくのが、感覚でわかるとベター。
- 息を吐ききったら、お腹を一度緩めて3~5を5回ほど繰り返す。(1日1分)
おおげさに胸を突き出したり、肩甲骨を締めて姿勢を作ったようにするのではなく、横隔膜を下げるイメージで腹圧だけ意識して行いましょう。すると呼吸によって締める筋肉がでてきますし、自然な姿勢になっていきます。
まとめ
スタンフォード大学スポーツ医局が取り組む最新のメソッド、「IAP呼吸法」は如何でしたでしょうか?最後にもう一度まとめておきますね。
①腹式呼吸との違いは、吸う息も吐く息もお腹を凹まさない!というところ。
IAP呼吸法は、お腹周りを固くしたまま息を吐ききるのが特徴。
②IAP呼吸法で得られる効果
- 体幹が安定し、正しい姿勢になるので中枢神経と体の連携がスムーズになる
- 中枢神経と体の連携がスムーズになると体が「ベストポジション」(体の各パーツが本来あるべきところにきちんとある状態)になる
- 体が「ベストポジション」になると無理な動きがなくなり、体のパフォーマンスが上がり疲れやケガも防げる
- 睡眠前のIAP呼吸法で体を回復させる
③体のバランスは「疲れ」と大いに関係する。姿勢が悪いと少しの動きにも余計な負荷がかかり、エネルギーを無駄に消耗し、疲れやすい体になる。歪んだ姿勢で呼吸を続けていれば体は疲れやすいまま。
④IAP呼吸法は横隔膜の可動力が重要。横隔膜を下げながら息を目一杯吸い、お腹をパンパンに膨らませたまま息を吐くのが「腹圧呼吸」。
⑤実践! 「IAP呼吸法」
- リラックス座って行う。所要時間1分!
- 体調が途中ですぐれなくなったりしたときは中断。コンディションが戻ってから再開しましょう。
- 疲労を防止するためにも、「1日最低1回」は取り組む。
- 耳と肩のラインを真っ直ぐにし座る。お腹と太ももは90度。肩はリラックス!
- 手のひらを上にして指先を体に向け、指を足の付け根に差し込んでいく。
- 肩を上げずに、5秒かけて鼻から息を吸い、足の付け根に差し込んだ指をお腹で徐々に押し返すようにお腹を膨らませる。
- 腹圧をキープしたまま5~7秒かけて息を吐く。肋骨が真っ直ぐに下りていくのが、感覚でわかるとベター。
- 息を吐ききったら、お腹を一度緩めて3~5を5回ほど繰り返す。(1日1分)
今回はIAP呼吸法だけにフォーカスして書いていきましたが、『スタンフォード式 疲れない体』(山田知生著、サンマーク出版)では、抗疲体質になる一流の食事法についても書かれています。
私もヨガ(呼吸法)の指導をしている身として、呼吸法だけ毎日頑張っていたとしても、コンビニ食であったり不摂生な食生活だと健康が手に入るとは思えません。
体を作っているのは「食べ物」ですから、疲労回復力や疲れない体を作るには「体内に入れるもの」も重要だと痛感します。
IAP呼吸法と並行して抗疲体質になる一流の食事法も取り入れていきましょう。
- 「疲れない体をつくる食事術」の記事はこちら
- 「疲れない体をつくる生活法」の記事はこちら
- 「疲れの3つの原因」の記事はこちら